新連載:整体師 渡辺俊介の《スポコン講座》 第1回[目のトレーニング&コンディショニング]其の一

第1回[目のトレーニング&コンディショニング]其の一
はじめまして。まことに唐突ですが、縁あってこの『あしボク編集Blog』で気ままに連載していくことになりました、渡辺俊介です。千葉ロッテのアンダースローと同姓同名同学年・別人の整体師です。
気ままとはいっても内容は至ってマジメ。主にボクサーに向けて発信しますが、ボクサーでない人でもきっとためになる、役立つ《講座》にしていくつもりです。よろしくお見知りおき願います。
まずはボクサーであっても、ボクシングをやっていなくても全ての人にとって重要な“目”の話から書いていきます。私自身、小学生の頃から強度の近視、高校生の頃には視力は0.02~0.03という有り様。眼精疲労には長年苦労しています。
また、日頃患者さんと接していて、目の疲労がいかに脳疲労に繋がるかということを実感しています。パソコンを長時間使う仕事の方などは、特に目の緊張、脳疲労がひどいです。“目が乾く”“目の奥が痛い”はまだわかるのですが、“目が乾いて、痛い。眉間まで痛い”とガチガチになっている方もいます。
筋肉が疲れているというよりは、視神経の緊張が続いて自律神経の緊張にまで発展してしまっているので、1日休んだ程度では回復しない疲れになってしまっているのです。
私自身、整体の技術を持っているので“テクニック”を使って弛緩させますが、なるべく専門的なテクニックを使わない、誰にでもできる様々な方法を書いていきたいと思います。
目に関係する神経は、視神経、動眼神経と2種類あります。視神経は、映像を映す神経です。動眼神経は、眼球を動かす神経のことをいいます。よく「動体視力(動いているものを捉える)」という言葉を聞きますが、この動体視力に大きく関わっているのが、動眼神経です。
では、動体視力を鍛える事によって、どんな利点があるのでしょうか? スポーツにおける(特にボクシングではパンチを当てる、よける両方において最も重要な要素ですね)パフォーマンスの向上、右脳の活性化などに繋がると言われていますが、私自身はもう一つ重要な項目があると考えています。
自律神経失調症、うつ病など、極端な脳疲労を起こしている患者さんに“目をグルッと回してみてください”と言うと、スムーズにできない患者さんの割合が多いのです。
もちろん動眼神経から鬱になるという極端な話ではなく、ストレス→神経系統の緊張→症状という順番なのですが、ストレスというのは精神的なものだけではなく“パソコンを長時間ジッと見つめている事”も含まれますので、目に繋がる神経を動かしてあげることで、脳の緊張を緩めることにもつながってくると思います。
動眼神経、後述する視神経を鍛える、あるいは弛緩する事が脳の蓄積疲労を取る事、あるいは思考力、集中力の向上にも繋がるという事です。
以下、具体的な目のトレーニング方法をご紹介いたします。
【1】
目印になるものを壁の4点に貼ります(画鋲などが手軽)。
★(A) ★(B)
★(C) ★(D)
目線の左端が(A)、右端が(B)となります。※(C)(D)ラインでもよし
同じく上端が(A)、下端が(C)となります。※(B)(D)ラインでもよし
【2】
顔は動かさず、目線を思いきり、これ以上行かないというほど、右(あるいは左)にやってみて下さい。
少し目の奥が引っ張られるような軽い痛みが出ると思います。この痛みが出る手前(八分程度)を、右端(左端)とします。上下も同じです。
【3】
立ち位置を決めておき、トレーニング毎、同じ場所に立ち(座り)ます。
畳や床の目印になる線を利用したり、自分でテープを貼ったりといった工夫をしてみて下さい。
壁から20~30センチの所に立てば、目印の幅は1メートル強になると思いますし、1メートル離れれば、6畳くらいの部屋だと、部屋の隅から隅まで目線を動かすだけで見えてしまうと思います。
部屋の壁の四隅を使っても結構ですが、漠然としているので、色のついた目印があったほうが、やりやすいかもしれません。
【4】
以下の要領で視線を繰り返し動かします。
横 (A)←→(B)、もしくは(C)←→(D)・・・・・20回
縦 (A)←→(C)、もしくは(B)←→(D)・・・・・20回
斜め (A)←→(D) ・・・・・・・・・・・・・・・・20回
斜め (B)←→(C) ・・・・・・・・・・・・・・・・20回
※注 同じ横のラインでも、上目と、真ん中、下目と複数のラインをやってもよいです。
【5】
ストップウオッチで、20往復にかかる時間をそれぞれ計ります。
以上・・・取り掛かりやすいように、一番簡単なものを書き記してみました。
訓練による“進歩”を実感するため、その日のコンディションを確認するため(普段よりタイムが遅い日は疲れが溜まっているということです)、自分の目の動きが弱い所(秒数がかかるライン)を見つけ、重点的にトレーニングするため、のメニューです。
目印をM字のようにギザギザに貼ったり、回数を増やしたりといくらでもアレンジが可能なので、楽しみながら訓練を取り入れていける方法です。
私は、仕事場のベッドで仰向けに寝転がり、前述した画鋲の代わりに部屋の天井の四隅を目印として使って、時間がある時にトレーニングしています。基準がしっかりしていれば、自分のやりやすいようにアレンジしても大丈夫です。
また、このトレーニングは2分程度なので、できれば アスリートの人は、毎日やることをおすすめします。人によって違いますが、一週間もやれば違いが出てくると思います。
個人個人で癖が出ますが(私自身は、右上、左下のラインがスムーズにいかない場合が多いです)、面白いことに、疲れやストレスが溜まっていると、眼球がスムーズに動かない場所が変わったり、一度動きがよくなったのに、また悪くなっていたりします。
脳と繋がっている証拠ですね。
パソコン仕事などでの眼精疲労が強い方は、目の疲れを感じた時にやっていただければいいのではないかと思います。
苦にならなければ、血流を良くする方法(次回触れます)とあわせて、1日数回、休憩中にオフィスの壁の四隅や、入浴中、寝る前などにやってみるのもよいでしょう。
今後もいろいろなやり方を書いていきますが、全部はできないかもしれません。目的に応じて、各自の生活の中に必要なものだけ取り入れればよいと思います。
周りのプロボクサーに聞いてみると、目のトレーニングを全くやっていないボクサーが多数いるので、悪い意味で驚かされてしまいました。“パンチなんか見えない、勘でよける”というボクサーもいますが、見えるに越したことはありません。
また、一昔前のボクサー…いや、ボクサーに限らずスポーツ選手は「動体視力」という概念がない時代だったこともあって“自分はそんなトレーニングをやらなかった”という指導者もいると思います。が、昔は虫を追いかけたり、女性であれば、お手玉をやったりという遊びの中で自然に動体視力が鍛えられていたのです。
動体視力が鍛えられるということは、脳も鍛えられるということです。時代が変わっているので、古き良き時代の人々のタフネスは、残念ながら我々は持ち合わせていないというのが現実です。
次回は、視神経の弛緩法、動眼神経の動きが悪い所の弛緩法です。
<参考文献>
「脳内視力」回復術(中川和宏 著)
どんどん目がよくなるマジカル・アイ(徳永貴久 監修)
■渡辺俊介(わたなべ・しゅんすけ)
1977年2月生まれ、静岡県出身。整体師、生活習慣病予防士。明治大学政治経済学部在学中より整体、気功などを学び、現在静岡県静岡市で整体院を開業している。ボクシングにはまり込み、自らも趣味としてジムで汗を流ながらプロ選手と交流を深める日々。
この記事へのコメント
“目を鍛える”という発想そのものがないがないことも多いので、読んで下さった方の意識が少しでも変われば嬉しいですね。
教えてほしいです。