再びガンボア&ララ【On Boxing@PC #053】
――モニタの片隅からセカイを覗く――
※バナー作成中
こんにちは、おおひなたです。
2/20の興行、再びこの2人に注目です。
【再びガンボア&ララ】
◆Feb.20 2009@フロリダ州フォートローダーデール(アメリカ)
会場:University Center Arena
プロモーター:Ricardo De Cubas : DeCubas Presents , Ahmet Oener : Arena Box-Promotion
テレビ放映:ESPN2
スーパーフェザー級8回戦
○ ユリオルキス・ガンボア(59.0キロ)/13-0-0, 11KO
――KO 1R(time: 0:35)――
× ウォルター・エストラーダ(59.2キロ)/35-8-0, 24KO
前回触れたガンボアのWBA世界フェザー級タイトル戦の、これが真の前哨戦(というか単なる調整試合)。なぜか階級を一つ上げて、スーパーフェザーでの完全な肩慣らし。4月には世界戦がセットアップされている上に1月にも試合をしているのだから、簡単な試合になることは予想できた。
急なクラスチェンジ、8回戦という設定もそれを物語る。
・・・が、相手のエストラーダは昨年12月にもプエルトリコの新鋭ローマン・マルティネスの「世界前哨戦」相手として選ばれ、判定まで粘っていたりもする微妙にしぶといボクサー(マルティネスは3月14日、イギリスに乗り込んでニッキー・クックからWBO王座を奪取した)。
この試合、どの程度やる気があるのか・・・と思っていたら、そんなことを考えさせるヒマもないほどの秒殺KO劇。あっけにとられた。
開始数秒でもう、スタンスを広くとって重心を下げた姿勢で強打を振り回す気満々のガンボア。明らかに前回のロジャー・ゴンサレス戦とは狙っているものが違う。
左フックから右ボディストレートで低く踏み込み、さらに左フック、右フックと振り回す。
勢いに押されたエストラーダが後退しながら闇雲に反撃し、もみ合いになったところをクリンチ気味に左手で押さえつけてから右ボディ、左手を離すとそのまま左ボディから右のショートフックにつなげ、その右一発がエストラーダの顔面を打ちぬき、崩れ落ちるようにダウン。
カウントを数えるまでもないほどの直撃弾だった。
7月のアル・シーガー戦を彷彿とさせるクリンチ際からのショート連打による戦慄の一発KO。
もともとガンボアは一発強打で仕留めるハードヒッターというわけではなく、ハイスピードで自在な連打が売りの選手だったが、いつの間にか、時折インサイドでのショートパンチに抜群の切れを見せるようになっている。
あの狭いスペースと刹那のタイミングであれだけの速度、あれだけのパワーを保ったフックが放てるというのは素晴らしいことだ。
将来的にはもっとハイレベルな相手に対しても高速アウトボクシングと、一瞬の爆発力を噛み合わせた幅の広い攻めができるようになるのが理想だ。
それがガンボアのスタイルの完成系ということになるのかもしれない(現状、まだ正面から強引に距離を潰そうとしすぎてカウンターを狙われる危険性が大いにあるため、もう少し有効にリードを使えるようにするなど、柔軟に攻防を組み立てたいところだ)。
4月17日に行われた決定戦…相手のロハスはクリス・ジョンのWBAタイトルに2度試合するも、どちらも力の差を見せつけられていたうえに、もう37歳の引退寸前のボクサー。
期待されているホープとして、華々しい勝ち方ができたのかどうか・・・・またこんど。
スーパーウェルター級4回戦
○ エリスランディ・ララ(70.1キロ)/3-0-0, 2KO
――KO 1R(time: 1:09)――
× キース・グロス(69.9キロ)/3-0-0, 1KO
1月のアメリカデビューを最高の形で飾ったララだが、早くも翌月、ESPNフライデーナイトファイトにガンボアと一緒に再登場することとなった。
やはりあのシャープな動きと鮮やかなKOが高く評価されたのだろう。同じ1RTKOでも2戦目とは説得力が違うのだから、当然のことだ。
そしてララは今回もまた1R、わずか1分少々でのKO勝ちという素晴らしい結果を収めることに成功した。安パイ相手とはいえ、見事だった。
開始からもう格の差は明らかだった。腰が引けている相手にジャブ、ボディストレートで軽く距離を測っておき、ものの数十秒もしないうちに右フックから踏み込んでの左ストレートで、顎をグシャリと打ちぬいた。
まさにパーフェクトな、教科書みたいな一発。グロスはまったく対応できずに吹き飛んだ。
起き上がっても完全に足にきており、ララはそのまま追いうちのラッシュをかけて一方的な試合に幕を引いた。
前戦に引き続き、ララは長い左ストレートという決め手をアピールすることに成功したと思う。手数はそれほど多くないが、その硬質なブローの確実性と正確さは高い。
同じ階級で世界選手権を制しプロ転向したアメリカのデメトリアス・アンドラーデ(ララは2005年、アンドラーデは2007年。ララが亡命しなければ北京五輪でぶつかっていた可能性もあった)と比べると、身体能力は同じように高いが、派手さと遊びがなく、硬いボクシングだ。いかにもアマチュア的、とも形容できる。
どちらも楽しみな存在だが、今後どのようにキャリア積み、どのように変貌してくるだろうか?
次戦は、冒頭で触れたガンボアの世界戦のアンダーカードで、さらにその次は「パッキャオvs.ハットン」のアンダーカードでも戦う予定があるという。相手は未定だが、より高いパフォーマンスを期待したい。
▽バックナンバー
#052 ソリス、ララ、ガンボアそろい踏みPart3
#051 ソリス、ララ、ガンボアそろい踏みPart2
#050 ソリス、ララ、ガンボアそろい踏みPart1
#049 アレクセイエフ、タイトル獲得ならず
#048 ガンボア、KOで全勝対決を制す
#047 アレクセイエフ地域タイトル防衛
#046 ゴメス、今度こそ王座挑戦権獲得
#045 カサマヨル、生涯初のKO負け
#044 ララ、デビュー2戦目はTKO
#043 ソリスは連続KOで復帰
#042 “亡命ホープ”エルナンデス復帰も…
#041 北京戦士プロデビュー・その2
#040 北京戦士プロデビュー・その1
#039 世界一遅い北京五輪総評・後編
#038 世界一遅い北京五輪総評・前編
#037 バルテレミ、GBPデビューで大失態
#036 ガンボア、初回KO
#035 見せ場は試合後!?
#034 奇跡の再亡命→プロデビュー
#033 ウィラポン、ついに・・・
#032 カバジェロ、パーラを粉砕。モリターとの統一戦へ前進
#031 アレクセイエフ、快勝続きで無敗維持
#030 ウィリアムス、大荒れの打撃戦を制す
#029 ガンボア、10戦目にしてHBOデビュー!
#028 ソリスvs.ボタへの軌跡
#027 チャベス、復帰戦を辛勝で飾るも先行きの不安ぬぐえず
#026 ゴンサレス、快勝でフェザー級進出は順調か??
#025 カサマヨル! 劇的TKOでトップ戦線返り咲き
#024 エルナンデス、激しい打ち合いの末、逆転KO負け
#023 ソリス、軽々と無敗をキープ
#022 バイエル、ライトヘビー級にて復帰
#021 ソリス、格下相手に快勝でイタリアデビュー
#020 ガンボア&バルテレミ快勝!
#019 クルーザー! クルーザー! クルーザー! 後編
#018 クルーザー! クルーザー! クルーザー! 中編
#017 クルーザー! クルーザー! クルーザー! 前編
#016 ソリス、WBCラティーノ・タイトル奪取も、やや消化不良
#015 アレクセイエフ、調整不足も派手にKO勝利
#014 バルテレミ、ガンボア、合衆国初上陸
#013 エルナンデス、難無く13戦目もクリア
#012 ゴメス、マッコールとの再戦を制す
#011 ジロフは、いま……
#010 次期クルーザー級最強候補? アレクシフ
#009 ソリス、ガンボア、WBCランキング30位以内へ
#008 またキューバ勢ウオッチング
#007 アブラハム、痛烈KO勝ち!
#006 キューバ勢ウオッチ【亡命事件の顛末】
#005 キューバ勢ウオッチ【ビデオ観戦…の後編】
#004 キューバ勢ウオッチ【ビデオ観戦…の前編】
#003 キューバ勢ウオッチ【前フリ…の後編】
#002 キューバ勢ウオッチ【前フリ…の前編】
#001 はじめに
■おおひなた れい
19○○年生まれ、東京都出身。八王子に屹立する某美大に、不真面目に通う院生。WEB2.0環境の恩恵を受けて以来、本格的に海外ボクシングを見始める。ジョイス・キャロル・オーツの『On Boxing』やブコウスキーに触発され、ボクシングと芸術の関わりについて日々考察中。約2分ほどプロボクサーを志した過去もあり…。
この記事へのコメント