エルナンデス、依然として微妙【On Boxing@PC #054】
――モニタの片隅からセカイを覗く――
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こんにちは、おおひなたです。
今回は“もうひとりの”亡命キューバ人、エルナンデスです。
【エルナンデス、やや持ち直したが依然として微妙】
◆Feb.28 2009@メックレンブルク・フォアポメルン州メックレンブルク(ドイツ)
会場:Jahnsportforum
プロモーター:Wilfried Sauerland : Sauerland Event
テレビ放映:Germany ARD, United Kingdom Setanta, Poland PolSat Sport
クルーザー級8回戦
○ ヨアン・パブロ・エルナンデス(90.7 キロ)/17-1-0、10KO
――KO 5R(time: 0:51)――
× Micky Steeds(92.5 キロ)/12-3-0、3KO
約1年前にウェイン・ブレイスウェイトに敗れて以来、すっかり精彩を欠いてしまっている「別の亡命キューバ人」エルナンデス。
ブレイスウェイトと戦う前は「そろそろ挑戦者決定戦も見えてくるかも」とさえ思っていたが、痛烈なKO負け後、復帰してからはかませ相手にホープにあるまじき拙戦を連発してしまう。
鼻っ柱をくじかれた敗戦を引きずっているかのような弱々しい姿に、まだ24歳と若いとはいえ、ぼくは先行きの不安を大いに感じてしまったものだ。
この日は、そんな危機的な状況を前にSauerland Eventがどう対処してきたのかだけが気になった。
相手は英国ヘビー級、クルーザー級タイトルを戦ったこともある小柄な若い白人ボクサーだったが、戦績からたいしたボクサーではないのはもうわかっていたし、実際観ても印象は変わらなかった。
エルナンデスは、のっけから逃げ腰になってオープンブローを闇雲に振り回すだけになっている相手の攻撃をきっちりいつもの盾ガードで潰すと、体格を生かしてプレッシャーをかけながら左右のボディアッパーや右フックで攻め込んでいく。
相変わらずパンチの精度が良くないうえにスタミナがないので逃げ回るSteedsを捕まえきれないが、左ボディから右フックなど、一瞬のコンビネーションにはやはり魅力的なものがあり、ここ最近の試合よりは本来あるべきというスタイルに戻っている気がした。
数は少なかったが右ジャブがかなりきれいに打てるようになっていて、もっとこのリードが生かせるようになれば距離のやりとりが楽になると思えた。今はせっかくの長いリーチを十分に生かせていないし、すぐに中途半端な接近戦でグダグダのもみ合いに持ち込まれている。
エルナンデスは俊敏さに欠け、足が使えないのでしょうがないとはいえ、インサイドに入られたときの対処も含め、かつてのフアン・カルロス・ゴメスのようにもう少し体格を有効に使うすべを覚えてほしい(まあゴメスと比較するのもかわいそうではあるけど)。
次戦はアテネ五輪のアメリカ代表(ヘビー級)最終選考まで残ったアーロン・ウィリアムスとのホープ決戦が予定されている(あくまで、予定)。
ウィリアムスは、エマニュエル・スチュアードの下で教わったことがあるとの経歴通り、ヒットマンスタイルからどんどん強打を打ち込んでくる攻撃的な選手(今度ロナルド・ライトとやるウィリアムスとは完成度が比較にならないが・・・)。
ラッシュは迫力があるが、隙もかなり大きく、モロさとスタミナ難がある。エルナンデスも相当にスタミナが無いため、序盤で勝負のヤマがくるだろう。面白い組み合わせで、どっちがKOされてもおかしくはないが、エルナンデスには最近の停滞を突破するためにも体格と距離の優位を生かしてKO勝ちすることを期待したい。
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#001 はじめに
■おおひなた れい
19○○年生まれ、東京都出身。八王子に屹立する某美大に、不真面目に通う院生。WEB2.0環境の恩恵を受けて以来、本格的に海外ボクシングを見始める。ジョイス・キャロル・オーツの『On Boxing』やブコウスキーに触発され、ボクシングと芸術の関わりについて日々考察中。約2分ほどプロボクサーを志した過去もあり…。
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